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宮本 みち子(放送大学/千葉大学名誉教授)

諸資源が集中する特別区特有の課題の解決に向けて

放送大学/千葉大学名誉教授
宮本 みち子

宮本みち子

少子高齢化と人口減少が進むなか、首都圏への人口集中が続いています。ところが低い婚姻率のために首都圏の出生率は最低水準にあります。そこに高い離婚率が加わった結果、若年層から壮年層で単身者・単身世帯が増加し続けているのです。

東京都区部は全国の市区のなかで単身世帯の割合がもっとも高く、過去10年の増加が顕著です。東京のような大都市はいつの時代にも単身者が多かったとはいえ、今の特別区のような単身者の多い時代はなかったといえるでしょう。少子高齢化が進む地方から若年女性が大都市に大量に移動し、人口が一極集中することを極点社会とすれば、特別区こそ流入する女性たちを吸い込んでいるのだということができるでしょう。その特別区の非婚化は進み、その結果、合計特殊出生率は2014年に1.19で、9年連続前年を上回っているとはいえ、全国の最低に近く、年齢別未婚率も高い水準にあります。この趨勢が続けば、将来は結婚歴のない高齢単身世帯が急増する段階に至ることが予想されます。

単身者・単身世帯の増加傾向は特別区において全国の先頭にあるといってまちがいありません。壮年期の単身者は、高齢期を迎えたとき、身内の支援を受けにくく身内に代わる支援が必要になることが懸念されます。また単身者が多数を占める地域社会の様相も今後さらに変わっているでしょう。このような状況を見据えて、壮年期の単身世帯が現在抱える課題や将来発生する課題等を明らかにすることは、東京都の将来を予測し設計をするうえで不可欠な作業ということができます。

そこで、私たちのプロジェクトは、つぎのことを計画しています。

第1に、国勢調査を用いて、全国、東京と比較しつつ特別区部の単身者の現状・動向・将来見通しを明らかにします。単身者の分析に際しては、 男女・年齢という基本的属性だけでなく、配偶関係(未婚・離別・死別) や世帯属性(たとえば高齢の一人親と壮年の未婚子という単身者予備群) も加え、背後にある親族ネットワークを明らかにします。さらに、国勢調査オーダーメード集計を活用し、小地域単位でも同様の分析を行います。

第2に、単身者意識調査を実施し、ライフコース、居住状態、地域とのつながり、結婚や高齢期に対する意識、区政への要望などを把握します。費用対効果の高い調査データを取得するため、上記の小地域分析をもとに典型地区を複数抽出して調査を実施します。また、インタビューに応じてくれる対象者を募り、個別に面接調査を実施する予定です。

以上を通して、これまで把握されてこなかった壮年単身者の実態を明らかにするとともに、将来の政策課題を整理・考察したいと思います。

このような研究を進めるうえで、このたび設立された特別区長会調査研究機構は大きな力となります。諸資源が集中する特別区特有の課題の解決に向けて、特別区行政と大学・研究機関等の研究者が連携して、政策志向の調査研究を進める母体ができたことは画期的です。行政が作ってきた膨大な調査データの再活用を図ることによって、実態把握を進め政策の方向を導きだせる調査研究機関として発展することを期待しています。